ひとくち

ふたりで食事をするのは、別にめずらしいことじゃない。

そこは、テレビで見たお店だそうだ。毎週日曜日午前9時25分からの3分番組。
「あの人が食べてるあれ、あれがこの店の"こだわりの一品"なんだって。」
そして運ばれて来たのは、青磁の器に盛られた、スープ入り炒飯『牛肉湯麺炒飯』。炒飯がまるく留まっているフォルムが、不思議。

スープを味見。
「うん、うまいわ。」
「ひとくち、食ってみる?」
私はれんげを受け取り、横からスープをすくう。ひとくち。
「ほんと、いろんな味がしますね。」

そう言えば、彼はA型で潔癖症ぎみで、目の前でひとが素手で触った食べ物などは、あまり口にしないひとだった。

いつの間に、わたしたち。