蟹と酒と、おもいで

黄金週間的行楽ということで、友達の家に泊まりに行く。都内だが普段はまず行かないところなので、何気に旅人気分。

今日のメンバーは女性3人。高校時代の同級生。ひとりは既婚者なのだが、彼女の旦那さんの実家から「山ほど」送ってもらった蟹を携えてきてくれた。これが本日のメインディッシュ。さすが本場モノだけあって、身がぎっちり詰まっていて、ジューシーなこと。当の本人は実はそれほど好きではないそうで、明日をも知れぬ自営業者ふたりが、ここぞとばかりに喰らいついた。ほろ酔い加減の酒がここちよく。

やっとあの頃のことが、酒のつまみに話せるようになったね、と言って笑う。

その渦中のただなかにいた頃は、毎日その波に翻弄され、私達は何時になったら心健やかに楽に息が出来るのだろうと、ため息をついた。ひとの感情がひたすらにぶつかり合い、弾け、そのくせ、まるで禅問答のような会話を好んだ。あの鳥かごみたいな世界の中で、けれどそれが私達にとっては全てで、悩んで、泣いて、気を狂わせて、でも平気なふりをした。今振り返るに、得たものも失ったものも等分にあった気がする。

私はやっと数年前、この辺りの諸々が自分の中で消化し終わって、さてこれからどう生きていこうかしらと、腹に落ちた。彼女らも、その加減が同じ感じだったらしく、昔の話も、これからの話も、素直に前向きに話せた。

おもいでが、ちょっと、キラキラしはじめたわけだ。